一般的な自動車のエンジンは
燃焼室の上に吸排気バルブが有る
‶ オーバーヘッドカムシャフト ‶
略して(OHC)という形式のエンジンが普及しています。
▼ OHC
OHCはSOHCとも言います。
ちなみにSはシングルという意味で
カムシャフトが1本という事です。
それに対して
カムシャフトを2本使用して、吸気バルブと排気バルブを
それぞれ独立したカムシャフトで開閉させるのが
‶ DOHC ‶です。
Dはダブルという意味で
ダブルオーバーヘッドカムシャフトという意味です。
▼ DOHC
では、基本的なカムシャフトの構造原理を見てみます。
燃焼室の燃料の供給と、燃焼ガスの排出を担っているのが
バルブです。
その吸排気バルブの上下運動を完全に制御しているのが
‶ カム ‶です。
その‶ カム ‶を連結したシャフトが
カムシャフトになります。
▼ カムシャフト
カムシャフトが吸排気バルブを動かす仕組みは極めて単純です。
▼ 具体的にはこうなっています。
カムシャフトにカムが回されて
カム山(突起物)がバルブ上部に当たって
バルブを押し下げます。
では、OHCとDOHCの違いを見ていきます。
OHCはたった1本のカムシャフトで
吸排気バルブを開閉するので、エンジンをコンパクトに設計でいます。
しかしOHCは1本のみのカムシャフトしかないので
バルブを開閉させるのに
ロッカーアームというパーツを必要とします。
▼ ロッカーアーム
カムシャフトのカム山が、1度ロッカーアームを押し上げて
そのロッカーアームがバルブを開閉させます。
つまり、OHCエンジンはカムシャフトは1本のみですが
バルブを駆動させるのに
ロッカーアームというパーツを介さなければなりません。
ロッカーアームを介するデメリットは
バルブ駆動のタイムラグによる燃焼制御の低さです。
しかし、そういったデメリットは極めて高回転時付近での話なので
それを補っても余りあるメリットもあります。
それは重たいカムシャフトが1本で設計できる事による
最終構成部品の少なさによる
エンジンの小型化、それに伴う軽量化
そしてカムシャフトが1本による抵抗値の低さから生まれる
低燃費化
オイル量の少量化
と様々なメリットが有るのがOHCエンジンです。
この様にOHCはとてもシンプルな設計の為
軽くて小さく、駆動抵抗も低いので
OHCエンジンが空冷式と相性が良いのはその為です。
反対にDOHCは
重たいカムシャフトを2本必要とします。
▼ DOHC
▼ 実際のDOHCの断面図
カムシャフトを2本持つDOHCは
OHCに比べると重たくなります。
また、カムシャフトを2本設置させる事による
上部のシリンダーヘッドが大きくなります。
その為に、DOHCは最終構成重量が高くなり
エンジン自体も大きくなってしまいます。
なので、シンプルな構成の設計には向かず
燃費面ではOHCには敵いません。
しかしDOHCの最も優れた特徴は
ロッカーアームを介せずに、ダイレクトにカムがバルブを駆動させる事です。
これにより、燃焼を厳密に制御する事が出来ます。
1万回転以上回る様な高回転エンジンが
全てDOHCなのはこの為です。
OHCでは高回転時の燃焼制御は難しく
OHCで無理に高回転まで回すと
バルブの開閉がピストンの上下運動に追随できず
最悪はバルブがピストンに接触して
エンジンを破損させてしまいます。
またDOHCは複雑なバルブ制御が可能なので
各社から出ている可変バルブエンジン等も
DOHCだからこそ成りえる高性能エンジンです。
可変バルブエンジンとは
吸気バルブ、排気バルブを任意の回転域で
2バルブ駆動 → 4バルブ駆動 → 2バルブ駆動
と切り替える事が出来る制御システムです。
メーカーによって呼び名が違います
ホンダ VTEC
日産 VVEL
トヨタ VVT-i
この可変バルブのメリットは
低回転域では2バルブ駆動にして
最低限の燃料だけを供給させて燃費を稼ぐ事が出来ます。
そして高回転域では4バルブ駆動にして
パワーを引き出す事が出来ます。
OHCはシンプルな設計で
軽くてコンパクトで低燃費なエンジンに向きます。
製造コストも安いです。
DOHCは高回転エンジンや、複雑なバルブ制御等が可能になり
パワーを求めるエンジンに向きます。
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