実はシールチェーンはほぼノーメンテで良い

初めに

バイクに乗る殆どの人は、ドライブチェーンメンテナンスをしていると思います。

今の中型以上のバイクは全て、シールチェーンを採用しているので

そんなに頻繁にグリスアップする必要はありませんが

 

チェーンルブ(グリス)はどんなものを、使用したら良いのか?

 

またどの位の頻度でチェーンの清掃注油をすればいいのか

分からない事も多いと思います。

 

その辺りのドライブチェーンメンテナンスについて

徹底的に解説していきます。

シールチェーンドライブのメンテナンス原則

 

ちなみにカワサキの取扱説明書には

走行距離500キロごと)

(雨天走行後、洗車後は注油してください)

 

とアナウンスされております。

 

 

しかし色々と調べていると

最近のシールチェーンは、かなり高性能化しているので

一定の条件が整えば

ほとんどメンテナンスフリーでも、問題無いと言っている方も居られます。

 

メーカーの指定する整備範囲と、実際に必要な整備範囲

どちらが正しいのでしょうか?

 

という事で、徹底的に調べてみる事にしました。

 

 

ドライブチェーンの構造円滑の必要性

そしてしばらく調査して解った事は

 

ドライブチェーンピンブシュ間円滑

最も重要で有る事。

このドライブチェーン内部の、ピンブッシュの円滑に

チェーン寿命の全てがかかっています。

 

 

よく我々の認識している

スプロケットローラー面の円滑は、実はさほど重要では無いです。

具体的にこの後解説します。

 

 

チェーンが伸びる理由

 

ピンの外周部ブシュの内側が摩耗して痩せる事で

隙間が広がって起こる現象であり、金属自体が伸びる訳では無いです。

 

 

シールリングの仕組み

 

シールリングは最も円滑が必要

ピンブシュ間にグリスを封入する事を目的で装着されている。

 

具体的にはピンの外側ブシュの内側に、グリスが封入されています。

ピンシールリングを装着して、グリスを密封構造にします。

 

そしてシールリングの上に、プレートを被せて蓋をします。

 

▼もっと詳しいシールチェーンの構造解説はこちら

シールチェーンの構造 解説

 

ローラーの本当の役割

 

ローラースプロケットの噛み合い時に

衝撃を吸収してブシュを保護する為の部品である事。

 

ローラーとスプロケットの円滑は不要?

 

ローラースプロケット噛み合い部分

円滑の必要性は殆ど無い

 

また仮にスプロケットローラー部に

グリスを塗ったとしても

高速走行ではすぐに飛散して行って消失してしまう事。

 

 

メッキ加工のチェーンはほぼ錆びない

 

高級ドライブチェーンのメッキ加工

チェーンの錆を強力に抑制して

傷でもつかない限り、無給油でも錆びる事はほぼ無い事。

(※極端な雨天走行後は水分の除去は必要)

 

 

フルメッキと部分メッキが有る

 

チェーンのメッキ加工外側プレート面のみのものと

プレート両面、ピン、ローラー等のチェーンの全体をメッキ加工したものが有り

フルメッキでは無い場合は、プレート裏側やローラー部分が錆びやすい。

 

 

私が調査した結果、これらの事が理解出来ました。

 

フルメッキチェーンは、ほぼメンテナンス不要

 

メッキ加工されたシールチェーンは

強い耐久性が有り

チェーンのたるみ調整最低限の油膜保持を行っていれば

500キロどころか

5000キロ~10000キロに1度の注油でも問題無く

 

またバイクの保管状況が、雨天にさらされない状況なら

年に1度の注油でも全く問題無いという

驚くべき事が分りました。

 

 

この事から分かるのは

シールリングの有るドライブチェーンに、注油する主な理由は

部品の接触による抵抗値の削減では無く

 

防錆の意味合いであるという事です。

 

 

簡単に言うと

円滑に関してはシールリングに封入されたグリス

その仕事をしているので

 

後はシールリングで防錆をしていない

プレート面ローラー部ピンの露出面等を

錆から守る必要性が有る訳です。

 

いくらシールリングで円滑していると言っても

シールリングが接触している、プレートの裏面が錆びてしまうと

錆びた部分がヤスリ状になりシールリングを傷つけて

その結果、シールリングで封入されていたグリスが

消失してしまいます。

 

 

過度なチェーン清掃はシールリングを痛める

 

またここでとても重要な事を書きますが

ドライブチェーン過度な清掃

かえってシールリングを痛めて結果的に

密封しているグリスを消失させてしまう事になります。

 

もちろんシールチェーンワイヤーブラシ厳禁な事は

ご存知だと思いますが

ナイロンブラシであっても強く擦れば

ゴムでできた柔らかいシールリングを痛めたり

チェーンクリーナーを多用すると

強い圧力で拭きつけられた溶剤が

シールリングの隙間に浸透して

封入された高性能グリスに混ざってしまい

高性能グリスの性能を、著しく低下させてしまう事が有ります。

 

 

この事からも現在のシールチェーンに関しては

耐久性の要ゴムでできたシールリングになっている事からも

かなりデリケートになっている点も有るので

 

最低限のメンテナンスの方が

結果的に長寿命化するという皮肉な事になっています。

 

 

チェーンクリーナーの使用は控えるべき

 

以上の事から私見を述べる

シールチェーンにはチェーンクリーナー

使用しない方が良いです

 

百害あって一利無しと言ったところです。

 

もっと言うと

シールチェーンは清掃しない方が賢明です。

 

 

こう言うと

そんな訳ない! 金属の円滑には注油が必要だ!

と思う方も多いと思いますが、それはシールチェーンが開発される以前の、チェーンドライブイメージが強いからだと思います。

 

全て金属で作られたチェーンが駆動するのに、油が無い状態では駆動抵抗が高すぎます。

 

しかし今のシールチェーンは、その駆動部の最重要摩耗部品である

ピンブッシュ内に高性能グリスを入れて、ゴム製のシールリングで密封構造になっており、見た目こそ従来のノンシールチェーンと同じですが

中身の円滑機構は内蔵された密封構造となっています。

 

 

実際ドライブチェーン古いグリスホコリ

チェーンに悪さをする訳ではありません。

 

またチェーンを清掃しない方が良い根拠は

まず汚れたグリスが埃を吸って黒くなっていても

シールリングは適度な圧力で、プレート内に装着されているので

汚れたグリスやホコリが、ドライブチェーンの要であるシールリングの中に入る事は有りません

 

次に砂利や小石ですが

ドライブチェーンは外側に対して回転力がかかるので

(遠心力)基本的には砂利や小石等は吹き飛んで行って

シールリングの有る内側に入って行く様な事も有りません。

 

なのでドライブチェーンの清掃

シールリングや、封入されたグリスを劣化させる危険性が有り

それを上回る必要性も特にありません。

 

ちなみに私のバイクは新車から1度もチェーン清掃していませんが、現在24000キロで何の問題もありません。

(メッキチェーンでは無いので注油はしています)

 

 

粘度の高いウェットグリスは要注意!

 

また極端に粘度が高いウェットタイプのグリスを使用してしまうと

チェーンに付着したグリスが埃を吸って、固まってしまい駆動抵抗が増えます。

 

具体的に言うとオフロード用途や、雨に対して強い耐久性を持たせたチェーングリスの事です。

 

▼ 実際に粘度の高いグリスが固着したチェーン

▼ プレートの裏側

一般的な使用環境ではオフロード用途の

粘度の高いウェットタイプのグリスは使用しない方が良いです。

 

硬く固着したグリスは、駆動抵抗になるので除去しないといけません。

 

しかし私がチェーンを外して清掃を試みたものの、固着が強すぎてチェーンクリーナーを使っても固着を落とせませんでした。

※一般的なチェーンルブは問題ありません。

 

 

シールチェーンに灯油は厳禁!

 

またシールチェーンを外して灯油に漬けるという

清掃方法を実践している人も居るかと思いますが

これは絶対に止めた方が良いです。

 

灯油は洗い油と言われていて洗浄力が高いのですが

シールチェーンを長時間灯油に漬けてしまうと

シールリング内に封入されている高性能グリスに

灯油が浸透してしまい、高性能グリスの性能が低下して

封入グリスが同時に流出してしまいます。

 

いくらシールリングでグリスを密封していると言っても

実はシールリングの密封圧はそんなに高くは有りません。

 

この理屈は極めて単純で

余り高い圧力でシールリングを密封してしまうと

シールリングとプレートとの摩耗係数が上がってしまい

駆動抵抗が上がるのと、シールリング自体が摩耗で駄目になってしまいます。

 

なのでシールリングの密封圧力は、最低限に留められているのです。

 

 

チェーンを灯油に漬けて洗う方法は

ノンシールチェーンにはとても有効ですが

シールチェーンには絶対に止めましょう。

 

 

なのでドライブチェーンの汚れが気になったら

新しいグリスを付けて拭き取る事で

綺麗にする方が良いです。

 

 

と言う訳で

フルメッキ加工されていない

普通のシールチェーンに関しては

 

ドライブチェーン自体に油膜を貼る為

グリスアップする必要性が有るという事が言えます。

 

 

それがフルメッキ加工されたドライブチェーンでは

もはや防錆の必要性も殆ど無いので

完全では無いものの

ほとんどメンテンナンスフリーになっているという事です。

 

 

ノーメッキのシールチェーンの場合

 

メッキ加工されていないシールチェーンに関しては

防錆の為3ヶ月~半年一度

グリスをチェーン全体に塗り付ける必要が有ります。

(※保管環境が雨に当たらない状態)

 

保管環境が雨水に当たる場合は

グリスを塗布しても雨水で洗い流されてしまうので

どんなにグリスを塗ってもキリが無いので

シートを被せて保管しましょう。

 

 

チェーンルブ(グリス)は何が良いのか?

 

またシールチェーンに使うグリスは

経験上、低粘度のチェーンルブ(グリス)か

ペーストタイプのグリスの方が良いです。

 

その理由は円滑はシール内部のグリスが行っているので

高粘度のタイプのグリスを使う必要が無いです。

 

高粘度グリスは油膜力は強いのですが、すぐに埃を吸ってしまい

固い個体となって、チェーン各部に固着してしまってとてもやっかいです。

 

なので防錆の意味合いで使用するグリスは

低粘度チェーンルブがおすすめです。

 

ワコーズ製チェーンルブ(シールチェーン対応)

 

ワコーズのチェーンルブはこのカテゴリーでは、最も円滑能力が高いです。

ノンシールチェーンに半年程使いましたが、チェーンにホコリがつきにくく清掃の必要性は無かったです。

ただ粘度が低いので若干飛散しやすい傾向があります。

 

 

▼ 定番のシールチェーン対応チェーンルブ

DIDは純正装着世界1のシェアを持つチェーンメーカーです。

このチェーンルブは粘度と円滑力のバランスが良いです。

 

※シールチェーンに使用するチェーンルブは、必ずシールチェーン対応のチェーンルブを使用して下さい。

 

 

また雨天走行後は防腐の為に、水分が完全に乾いてから

再度グリスアップの必要が有ります。

 

 

次にフルメッキ加工されたシールチェーンは

年に1度程度チェーン全体をグリスアップするだけで

 

あとはチェーンが伸びない限り

特にメンテナンスの必要は無いです。

 

もちろん雨天走行後は同様に再度グリスアップした方が良いですが

特にしなくてもメッキは濡れたぐらいでは

すぐには錆びないので

雨天走行を2,3回程度してから

1度グリスアップでも良いかと思います。

 

 

ノーメンテでも点検は必要

 

また誤解しないでもらいたいのは

フルメッキ加工されたドライブチェーン

ノーメンテナンスでもチェーンの寿命に変化は無いのですが

 

走行中に小石等がチェーンにヒットして

メッキ部分に傷が入ってしまうと

そこから錆が発生する事が有ります。

 

なのでいくらノーメンテナンスだからと言っても

定期的に点検は必要です。

 

ノーメンテナンスというのは

ノーチェックではありません。

 

■ 【 まとめ 】

 

【ノーメッキのシールチェーンのメンテナンス】

 

防錆の為にグリスの塗布が必要

 

頻度3~6カ月に1度

雨天走行後、洗車後は再びグリスの塗布が必要。

 

※チェーンの洗浄はやらない方が賢明。

 

 

フルメッキ加工のシールチェーンのメンテナンス

 

防錆の為のグリスの塗布はやらなくても問題無し

ただメッキを腐食から保護する為に、グリスアップしても良い

 

頻度 1年に1回

雨天走行や洗車を2,3回したら

再度グリスの塗布する位で十分。

 

チェーンの清掃は不要

 

また防錆に使用するグリスは

粘度の高いウェットグリスは、固着の原因になるのでやめた方が良いです。

 

低粘度のチェーンルブか、垂れないペーストタイプのグリスがお勧めです。

 

 

【ノンシールチェーンのメンテナンス】

 

ノンシールチェーンドライブは

シールリング機構を持たないので

500キロごとにグリスアップする必要が有ります。

 

また雨天走行後やチェーンに長時間水がかかった場合は

走行距離に関わらず再度グリスアップが必要です。

 

 

というような感じになります。

 

 

と言う訳で

今回は煩雑なチェーンメンテナンス

ノンシールチェーンに関しては実は最小限で良く

 

過度なチェーン清掃はかえって

シールチェーン寿命を縮めてしまうという

 

これまでの常識からみると、かなり意外な事実だと思います。

 

 

バイクにとっての愛情が、かえってバイクを痛めてしまう事も有るので

気を付けましょう。

 

と言う訳で少しでも皆さんのバイクライフに貢献できればと思います。

 

 

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