さて今回は
バイクのリアサスペンションの進化に関して考察します。
バイクのリヤサスペンションの歴史を辿ってみると
実は第一次大戦まではリジッドマウント(直接接続)
されていて
シートにスプリングを付けるというのが一般的でした。
▼こんな感じです
今の自転車と同じ方式です。
もちろんこの方式だと
路面のギャップを受け止める機能は無いので
激しい段差では後輪が浮いてしまいます。
その後ツインショックという方式が採用されていました。
これはシンプルな構成で
スイングアームとリヤフレームにサスペンションを取り付けて、ホイールをストロークさせて路面のギャップを吸収する仕組みです。
そして最近になってリンク式のシングルサスペンションが
主流になりつつあります。
ちなみにカワサキでは
“オフセットレイダウンリヤサスペンション“と言っています。
カワサキは積極的にこのリンク式モノサスを採用しています。
では従来のツインショックとの違いを見ていきます。
ツインショックの場合は昔から使われていた設計で
フレーム後部とスイングアームの間に取り付けて
後輪のショックを吸収します。
リンク式モノサスの場合は
スイングアームとフレームの中心部分にリンクを介して
サスペンションをレイダウン(傾斜)させて取り付けて
後輪のショックを吸収します。
リンク式モノサスは従来のツインショックと比較して
ストローク量を稼げます。
この原理を解説すると
ツインショックの場合はホイールの中心に近い場所に
リヤサスペンションが有るので
ホイールが5cm動けば
ほぼ同じ分だけサスペンションが動いてしまいます。
▼以下 解説図
ホイール 5cm = サスペンション 5cm
完全に正比例です。
それがリンクを介すことで
ホイールで5cmストロークしても
ホイールと離れた車体の中心部では
スイングアームの動きに対して
より少ないストロークで同じ分の動きを制御できます。
この構造理論は少し解り難いので下の図で解説します。
左側がフレーム側で右側が後輪です。
ホイール側が大きく動いても
フレーム側に行くほどストロークが小さくなります。
具体的な図で見るとこうなります。
全く同じストローク量でも中心部と外側では
ストローク量が違う事が分ると思います。
逆に言うとモノリンク式サスは
そのストローク特性上ツインショックよりも硬い
スプリングが必要になる事が分ります。
硬いスプリングで
大きな力を小さなストロークで受け止めるので
ストローク量を大きくとる事が出来ます。
そしてサスペンションとスイングアーム間に
リンクを介しているのでプログレッシブ特性(累進性)
を得る事が出来ます。
これは初期荷重は柔らかく動き
ストロークが深くなるにつれ固めに動く事になります。
このプログレッシブ特性によって
コーナーリング特性は高くなります。
コーナーに入った時はサスペンションが柔らかく沈んで
最も負荷がかかるコーナー中央付近では
サスペンションが粘って路面のグリップを維持して
急激な突き上げを防ぎます。
またプログレッシブ特性はオフロード走行にも
大きなメリットが有ります。
オフロード車は大きなストロークでホイールが動くので
ストローク比が正比例のサスペンションでは
サスペンションが完全に縮みきってしまい
大きな衝撃をライダーや足回りに与えてしまいます。
最悪はチェーンが切れてしまったり
足回りが壊れてしまいます。
またリンク式モノサスは
より車体中央部にサスペンションを設置出来るので
マスの集中化に貢献して車体の挙動が安定します。
それ以外にも
ツインショックと比べて2つの部品を
1つにするので、軽量化にもなります。
基本的には従来のツインショックよりも
リンク式モノサスの方が性能は高いです。
ただ実際はツインショックと言っても
そのタイプは様々に進化しているので一概には言えません。
ツインショックの進化の1つに
レイダウンが有ります。
レイダウンとは(寝かせる、横たえる)
と言う意味が有ります。
今回レイダウンと直立式のストローク比を調べる為に
図を作って測定してみたところ
レイダウンするとストロークが量は減り
逆累進性である事が分りました。
通常の直立式と比べて同じホイールのリフト量でも
レイダウンした方はサスペンションストロークが減少しました。
つまりは同じサスペンションを使った場合
レイダウンさせた方が
サスペンションのストロークが減少して結果として
乗り味が柔らかくなりホイールリフト量も増えます。
一般的にはレイダウンすると累進性になり
プログレッシブ特性が得られるというのが
通説だったと思うのですが
もしかすると
サスペンションは複合的に進化しているので
レイダウンに加えて支点を後輪軸より車体前方にして
累進性を加えて
さらにバリアブルレートのスプリングを付けて
最終的にプログレッシブ特性(累進性)を高めた
レイダウンしたサスペンションを
見ただけで
レイダウン = 累進性
と誤った情報が広まった可能性も考えられます。
またレイダウンさせる事は
リンクを使うのに有効でもあります。
直立式では設計上リンクを介すのは難しいです。
またサスペンションの取り付け位置が
スイングアームのホイール軸部分から離れる程
累進特性になります。
このレイダウンとリヤサスペンションの取り付け位置を
ホイール軸から遠ざけて
リンクを介す事の組み合わせで
結果的に累進特性を任意に変える事が出来る訳です。
その他にもバリアブルレートの採用も
リヤサスペンションの大きな進化の1つです。
バリアブルレートとはスプリングピッチを変化させる事によって
リンクやレイダウンをせずにプログレッシブ特性を
サスペンション単体で変更できます。
バリアブルレートの原理は
一つのスプリングの中で巻き数の異なる
領域を作る事によって
始めにピッチが短い領域で小さな力を受けた後
ピッチが長い領域で大きな力を受け止めます。
簡単に言うと小さな衝撃は柔らかい領域の1段階目の短いピッチのスプリングが受けて潰れて
それ以上の大きな衝撃は固い領域の2段階目の長いピッチのスプリングが潰れる事になります。
つまりこの機構だけでプログレッシブ特性の
サスペンションを作る事が出来ます。
もっと具体的に説明すると
バネレート(バネ強度)はスプリングの巻き数が
多い程柔らかくなります。
この原理はバネを一本の銅線と考えると分かりやすいです。
一本の銅線を手で曲げようとすると
銅線が同じ太さなら、長い銅線程容易に曲げる事が出来ます。
これは(テコの原理)です。
つまりバネピッチが短い方(長巻)で
先に縮んで、完全に密着すると短いピッチのスプリングの
バネレートは無くなって
残りのピッチが長い方のスプリングが縮み始めます。
この二段階の動きによって初期荷重は柔らかく受けて
ストロークが深くなるにつれて固く動く
プログレッシブ特性を持つ事が出来ます。
また最近ではサスペンションにリザーバータンクを装備して
高圧ガスを封入し減衰力の特性を高めて
冷却性も向上していたりと性能が高いものが出ています。
2018年製のCB400SFは
リザーバータンク付きバリアブルレートツインショックです。
少しレイダウンさせてあります。
先程の解説図の様にサスペンションの取り付け位置を
ホイール軸よりも前方にずらしているので
累進特性になります。
ですがレイダウンさせているので逆累進性になり
結果的にプログレッシブ特性を打ち消し合っています。
ですが直立式と比べるとよりストローク量を
稼ぐ事に成功しています。
その上バリアブルレートを採用しているので
プログレッシブ特性が強い設計と言えます。
従来式の直立式ツインショックに比べると
ロングストローク、バリアブルレート、リザーバータンク装備と
かなり高性能なサスペンションです。
最近のバイクのリヤサスペンションは
殆どプリロード調整機構が付いています。
プリロードとは(初期荷重)の事で
サスペンションが沈み込み始める重量を設定できるという事です。
ライダーの体重や二人乗りや重量物の積載等で
加重増加するような使用環境に合わセッティングします。
殆どのバイクは5~8段階の設定幅があり
初期荷重の設定は(2)になっています。
バネを縮めれば加重庄に対しての初期動作が固くなり
大柄の人や、タンデム、荷物の積載時等でも
適正なストロークを発揮します。
反対にバネを伸ばすと
加重庄に対して初期動作が柔らかくなり
小柄な人や女性、ソロツーリング等で適正なストロークとなります。
このセッティングが適正で無い場合は
固すぎる場合は路面のギャップの度に突き上げを感じたり
柔らかすぎる場合は車体がフワフワして不安定になります。
また下道と高速道路でも当然セッティングは変わってきます。
下道ではサスは柔らかい方が良い訳ですが
高速道路では余り柔らかいと車体の挙動が大きくなり危険です。
最近ではそれを電子制御で行う技術で確立されており
コーナー進入時はサスを柔らかくして沈ませて
立ち上がり時は逆に硬くして車体を安定させる訳です。
BMWのスーパースポーツ等で使用されています。
ちなみにクルーザータイプのバイクは
適正なリヤサスペンションの性能を発揮するためには
乗車位置も大事なポイントです。
クルーザーはホイールベースが長いので
ネイキッドのバイクの様に中央から前に乗車すると
リアサスペンションにしっかりと荷重がかからないので
段差を超える際に下から突き上げられる様な感じになる事が有ります。
こういう時はシートの後ろ側にお尻を付けて
リヤ側にしっかりと荷重をかけてあげる事で
ホイールに適正な圧力が加わり事により
ホイールがストロークして路面の衝撃を吸収します。
という訳でリヤサスペンションについて考察してみました。
バイクの構成部品はメーカーの努力で
日々進化している事が分ると思います。
▼ フロントフォークについての記事はこちら
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50cc~125cc グロム、Z125等
125cc~ アドレス125、PCX125等
250cc~
ITX9-FP ニンジャ250等
400cc~750cc
ITZ10S-FP CB400SF、MT07等
1000cc~
ITZ14S-FP CB1300SF等
650cc~
IT12B-FP ニンジャ650~1000等
ITX14H-FP スポーツスター等
ITL9-FP ゴールドウイング、ハーレー等