今回は小排気量キャブレター車の
冬季の冷寒時の空燃比のセッティングについてです。
さてこの前KSR110のキャブレターをオーバーホールして
冬季のアイドリング不調を完治させました。
▼キャブレターOHの記事
そしてキャブレターを冬季用に最適な空燃比に調整をします。
エアスクリューをマイナスドライバーで調整します。
エアスクリューは空燃比の調整機構で
アイドリング~アクセル開度1/4程度の、回転域の空燃比に大きく影響しています。
まずKSR110のエアスクリューの規定位値は
エアスクリューを右一杯に回して止まる所から
1回転と3/8回転を左に戻した位置です。
※メーカーカタログ値より
これが規定値な訳ですが
実際にはキャブレターの空燃比は
外気温の影響を受けて変化してしまいます。
夏場は気温が高いので空気密度が薄くなり、空燃比は濃くなってしまい
冬場は気温が低いので空気密度が濃くなり、空燃比は薄くなってしまいます。
空気密度が変わるとその中に含まれる
酸素濃度も同時に変化してしまいます。
それに対し
キャブレターが供給する燃料濃度が一定な為
夏と冬では空燃比がずれてしまう訳です。
▼詳しいキャブレターの解説はこちら
という訳で冬なのでエアスクリューを右に回して
燃料を濃く設定します。
ちなみに各気温での最適な空燃比のセッティング方法は
エンジンが温まった状態で、エアスクリューを規定位置から回していき、最もアイドリングの回転数が高くなるポイントが、最適な空燃比の位置です。
※純正の規定値はリーン(薄目)になっている事が多いです。
という訳で、冬季の安定したアイドリングの位置に設定しました。
しかし……。
エンジンが冷えている状態では
アイドリングの回転数が低下して
やはりエンストしてしまう事が解りました。
そして逆に冬季のエンジンが冷えている時でも
エンストしないアイドリングの回転数に設定すると
今度はエンジンが温まった状態になると
アイドリングがやや高過ぎる感が有ります。
あちらを立てればこちらが立たず、と言うどっちつかずの状態です。
これはつまりセッティングの限界です。
メーカーであるカワサキの取説には
‶冬季はエンジンを温めてから走行してください‶
と書かれていました。
ちなみにこの冬季の冷感時アイドリング不安定の原因は
① 冷感時はエンジンオイル粘度が高い
② 外気温と燃焼室温度が低いのでガソリンが気化しにくい
以上の2点の要因によるものです。
KSR110の様に小排気量のエンジンは、1度の燃焼燃料が少ないので燃焼に関する僅かな悪影響でも、コンディションに変化が有ると感じました。
キャブ車でも排気量が400cc位有れば、エアスクリューで空燃比の設定を最適にすれば、燃焼による回転力の強さでエンストする事は無いでしょう。
まあ高めのアイドリング設定は、特別大きなデメリットが有る訳では有りません。
強いて言えば無駄に高いアイドリングは
燃料の無駄、オイル、プラグの消耗を極僅かに促進させ、夏季ではオーバーヒートの耐性を弱めます。
最終的にはエンジンが冷えている時のアイドリング中のエンストを嫌って、エンストしない高めのアイドリング設定にしました。
寒い中5分もスロットルを開けているのはアホらしいので……
しかしそう考えてみれば、それこそ燃料の無駄だ……。
一応暖機は30秒ほどは行います。
これはトランスミッションの噛み合い部分の摩耗を避ける為です。
エンジンは暖機をしてもしなくても摩耗しているのですが、トランスミッションギアの噛み合い部分は、走行しなければ摩耗しませんので、この部分に関して言えば多少暖機して、オイルポンプでオイルを潤滑をさせてから走った方が良い訳です。
▼暖機運転に関してはこちらに詳細の記事を書いています。
話はアイドリングセッティングに戻りますが、このセッティングは冬季の冷えている時のエンストをしない事を、主眼に置いているので、エンジンが温まるとアイドリングは高めになります。
と言っても冬季なので、オーバーヒートの耐性に関しては考える必要は無く、ガソリンが少しもったいないと思う程度です。
また冬季はバッテリーの性能が低下するので、アイドリングが高い事はプラスになります。
といってもKSRはキックスタートなので、バッテリー電力に関して心配する事も無いのですが。
今回のセッティングで良く解った事は、小排気量のキャブレター車でオートチョーク機構を持たない車両は
日本の四季に完全に対応するのは困難であるという事です。
自動車の様にキャブレター車でもオートチョーク機能を持っている様な場合は、この気温変化に対応している訳ですが。
今は殆どのバイクがインジェクションになっているので、こう言った事も徐々に無くなりつつあります。
▼その後この方法で冬季の冷感時エンストを解決しました。