さて前回
キャリパーのオーバーホールを実施した訳ですが
そこで感じたのは
ブレーキパッドピンは事の他
劣化が激しい部品であると言う事です。
▼ ブレーキパッドピン
ブレーキパッドを固定する為のパーツ。
またキャリパー構成部品の中でも
ブレーキパッドピンは
構造的に耐久性が低いパーツだと言えます。
キャリパーの要であるピストンは
内側がブレーキフルードで満たされているので
腐食の心配は有りません。
▼ピストンの内側
ただブレーキパッドを押し付けている部分は
完全に外に露出しているので理屈では腐食するはずですが
表面に防腐処理がなされているので
実際にはほとんど腐食しない事が多いです。
実際に外したピストンを見てみましょう。
やはり外側に露出している部分は若干腐食していますが
許容範囲です。
▼リヤキャリパーピストン
露出している部分だけが腐食が有るのが良く解ります。
ピストンは想像していたより強度が高いです。
メッキ処理の様な表面加工がなされています。
そしてピストンの次に重要なパーツである
スライドピンもダストブーツで保護されていて
その内部はシリコングリスで封入されているので
ダストブーツに異常がない限りは劣化の心配は有りません。
▼ダストブーツ
フロントキャリパースライドピン
リアキャリパースライドピン
15年経過しても前後共に全く劣化無しです。
そこでブレーキパッドピンです。
▼ フロントブレーキパッドピン
▼ リヤブレーキパッドピン
このパーツだけ再使用不可な位劣化していました。
これはブレーキパッドピンは
構造的に周りをグリスやゴムで覆う機構が無いので、どうしても劣化が激しいのだと言えます。
そしてパッドピンの役割とは
ブレーキパッドをキャリパーに固定する事が1点ですが
その他にも
ピストンでブレーキパッドを押し出すと、ブレーキパッドはディスクと接触して前方向に引っ張られます。
つまりスライドピンとは、ただブレーキパッドを固定しているだけの
ボルトの役割だけでは無く
‶レールガイド‶の役割を持たせている訳です。
なので使用後のパッドピンはブレーキパッドとの接触部分が摩耗します。
接触部分が摩耗しているのが分ります。
逆に言うとここが劣化するとガタが増えて
ブレーキパッドの可動域が大きくなるという事になります。
と言っても、実はブレーキパッドのパッドピンが通る穴の内径と
パッドピンの外径は元々結構なクリアランスが有るので
多少削れたくらいではそこまで心配は有りません。
またいくらパッドピンの腐食が進んで可動領域が削れても、走行中にパッドピンが折れる様な事はまずありません。
しかし問題は整備の時にブレーキパッドをばらす際
パッドピンが固着している場合があります。
その時にパッドピンが極端に錆びて痩せていると、レンチで緩めている時に
(ボキッ!)と折れてしまう事は考えられます。
そういった意味でも
年に1度のパッドピンのグリスアップは
ただ単に腐食を防ぐだけでなく
固着を予防できるという利点も有ります。
という訳で
ブレーキパッドピンは縁の下の力持ちで、普段特に気にする事も無い部品ですが
それなりに重要な仕事をしている部品の1つという事が出来ます。
この事から
パッドピンは年に1度キャリパーから外して
グリスアップする事をお勧めします。
またキャリパーを外したり
ブレーキフルードを交換するのは面倒ですが
パッドピンはそれ単体で外す事が出来る部品なので
実は非常に簡単で外す工具はレンチ1本で事足ります。
また車種にもよりますが、最近のキャリパーはパッドピンが1本の物が多いので
本当に簡単に外す事が出来ます。
なので皆さんのバイクライフの中の
オイル交換やチェーン注油等の整備項目に
パッドピンのグリスアップを加えてみてはいかがでしょうか。
今回はかなりマニアックな記事になってしまったので
オイル交換すら自分でしない様な人にとっては
英語の小説を読む様な感じかもしれませんが
良く解らない人にはブレーキの整備は大事だと
簡単に思ってもらえればと思います。(笑)
▼ 実際にパッドピンをグリスアップした記事はこちら
▼ブレーキパッドピンに塗るグリスはこちら
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