暖機運転について考察する

さて今回は暖機運転について考えたいと思います。

今では4輪車において暖機運転を行っている人は
恐らくは殆ど居ないんではないでしょうか?

バイクに関してはそれなりの人がまだ暖機運転をしている様な気がします。

と言ってもアンケートを取った訳では無いので正確な割合は分りませんが。

ちなみに日本最大手の自動車メーカーであるトヨタ自動車は
暖機運転の必要を完全に否定しています。

暖機運転論争は昔から有り、整備関係者の間でも意見が分かれていますが
メカニックには、暖機必要派が多い様な気がします。

前置きはさておき、では何故暖機運転が必要と言われているのでしょうか?

それはレシプロエンジンではピストンの上下運動を
クランクシャフトで回転運動に変換しています。

そしてエンジンの内部では金属同士が
常に接触したり離れたりをしています。

そのままでは金属がすぐに摩耗して、焼き付いてしまいます。

それを保護する為にエンジンオイルが入っています。

エンジンオイルは温度によって粘度、極厚強度が変わります。

そしてエンジンオイルは60度~100度の温度内で
最も極厚強度が発生するようになっています。

その辺りが暖機運転根拠になっています。

またそれ以外にも
ピストンリングシリンダークリアランスの設定が

金属の熱膨張後に設定されている事も要因になっています。

その為、冷感時ではクリアランスが広く
燃焼時にエンジンオイルに混合気や排気ガスが混ざりやすくなります。

この辺りが最も重要な争点ですので
そこで詳しく説明します。

ピストンリングの外径はシリンダーよりも若干大きく
張力を持たせていて常にシリンダーに対して適度に庄がかかっています。

 

 

そしてピストンリングと言っても実際
は〝コンプレッションリング〝と〝オイルリング〝が有り

基本的にはトップリング、セカンドリング、オイルリングと
3本のピストンリングが一つのピストンに装着されています。

 

そこで考えると確かにエンジンをかけて
すぐに走行を開始すると油膜強度が弱い状態で
金属が接触運動するので、摩耗を加速すると思いがちですが

ここで冷静に考えると、暖機運転をしたとしても
オイル温度が低い状態で金属同士が接触運動をする事には変わりは有りません。

別にオイルヒーターでエンジンオイルを温めてから
エンジンを始動するのなら話は別ですが

実際には暖機運転と言っても車種によっても違いますが
大体1000回転~2000千回転位にアイドルアップして

エンジンが作動する事になります。

それでも油膜強度が低い状態ではなるべくエンジン回転数を
上げない事が、エンジンに良いという理屈が有る訳ですね。

この理屈は正しいと言えるでしょう。

実際に油膜強度が低い状態で8000回転まで回したら
エンジンの摩耗係数は高くなります。

では(2000~3000回転)ならどうでしょうか?

この辺りが一般的な常用回転数ですが

私の主観ではその程度ならアイドリングと摩耗係数大差無いと考えます。

もちろん、アイドリングよりは摩耗係数は高くなりますが
ここで一つ盲点が有ります。

回転数を少し上げる事でオイルポンプの油圧を高める事で
短時間で金属各部にオイルを行き渡らせる効果と

油温を短時間で適正温度に到達させる事が出来るメリットが有るのです。

なので回転数が高くなった事による摩耗係数の増加分に対して

油圧が高くなる事によるオイル循環性の高さから来る

金属保護を早める要素と

油温が短時間で適正温度に到達する事の

二つの要素の摩耗係数の低下分

相殺してどちらが摩耗係数が低いのか

を考える必要が有ります。

残念ながら、それを計測したデータは持っていません。

しかし私は一つの考え方をしますと

例えばコールドスタート1300回転で摩耗係数が(1分1)として
5分間暖機運転して×5=摩耗係数が(5)とします
(1×5=5)

次に
2600回転で2分半走行した摩耗係数を考えると

2600回転 2倍の回転数なので摩耗係数 =(2)

2分半 なので×2.5

摩耗係数(2×2,5=5)

細かい計算は抜きにすると、両者は同じ摩耗係数で適正温度に到達します。

もちろん実際には様々な要因が関係しあっていますので
この計算はかなり大雑把なものですが

私が言いたかった事は2つあります。

 

●暖機運転をしても摩耗は避けられない

●暖機運転をしない事でエンジンオイルが早く温まり

オイルポンプの油圧も上がるのでオイル循環性が高まる

 

 

つまりは暖機をする事によるデメリットも有るという点です。

アイドリングではオイルポンプの油圧は低いので
長時間のアイドリングの方がエンジンに良くないという考え方も有るのです。

そして私が一つの考えとして提案するのは

エンジンにとって最良なのは

〝走行暖気〝 では無いかという事です。

アイドルアップの2~3倍程度の回転数であれば

摩耗係数の増加は限定的で

早くオイルを温め、油圧も高くなる事によって

早くエンジン全体にオイルを行き渡らせるという二つの

エンジンにとって摩耗係数を削減する効果が有ります。

これによって結果的にはトータルの摩耗係数は低いのではないかと言う考えです。

例えば家で5分間暖機運転をして30分走って会社まで行ったとします。

その場合は35分エンジンを作動させた事になります。

反対に暖機をせずに会社まで行くと
30分エンジンを作動させた事になります。

この場合、暖機運転をする場合は5分間のアイドリングに対して

暖機運転をしない場合は恐らくは3~4分でエンジンは適温状態に到達します。

これはつまり暖機運転時よりも早くエンジンを適温状態に持って行く事が出来ます。

エンジンにとって良く無いと言われる

冷感時の運転時間が短くなる訳です。

 

もちろん冷感時で走行するので

エンジン回転上昇による摩耗係数の増加が発生します。

 

ただ冷感時のエンジン回転上昇による摩耗係数の増加分

エンジンが早く適温状態に達する事

エンジン回転上昇によるオイルポンプからの油圧が高まり

各部にエンジンオイル循環する事による摩耗係数の低下分

最終的には摩耗係数の増減は釣り合うのではないかと思う訳です。

 

また暖機をしない場合はアイドリングの

5分間エンジンの作動時間を削減しているので
その削減分の摩耗係数の低下分も有ります。

トータル的に果たして暖機運転が必ずしも
エンジンに良いという事に疑念が残ります。

 

また、走行暖気には燃料と時間の節約というメリットが有ります。

またバイクに関してアイドリング時は発電能力が低いので

バッテリーへの充電よりもヘッドライト等の放電の方が

多くなる傾向になるので

バッテリーに関して暖機はしない方が良いです。

 

メーカーの取扱説明書にも長時間アイドリング状態にすると

バッテリーが上がると明記されています。

 

ただエンジン始動後すぐに走行するのは余りお勧めはしません。

10秒~2,30秒暖機運転をした方が良いと思います。

 

それはピストン吸排気バルブ温度を高める事

エンジンオイルを各部に循環する点

特にマニュアル車ではトランスミッションギアボックス

噛み合い部分の摩耗を避ける為多少エンジンオイルを潤滑させて油温を高めた方が良いです。

ちなみに私は冬場1分間程度

夏場20秒程度しか暖機運転はしません。

ただ回転数はなるべく上げずに、早めにシフトアップして

サスペンションブレーキトランスミッション、タイヤ等の

足回りの暖機〝も同時に行いながら走行しています。

足回りの暖機は以下です。

 

●タイヤも温まらないと適正なグリップ力を発揮しません。

 

●ブレーキも一発目はローターに埃や湿気が有ると、制動力を発揮しません。

 

●サスペンションは密封に使われているゴムシールが冷感時は固く
温まってゴムが柔らかくなってからの方がひび割れしにくく、密封性も高くなります。

 

この中で特に冬季のタイヤを温める事は(主にバイク)

▼結構大事な点なので詳しくはこちらで解説します。

冬季のタイヤ暖機とは

 

またエンジンは始動後、オイルポンプの作動で

エンジンオイルは10秒程度で

ピストン周り、カムシャフト、ロッカーアーム、吸排気バルブ、クランクシャフト

トランスミッション等の全てのエンジン各部に
オイルが行き渡ります。

なので円滑に関しては10秒で問題ありません。

次に油温に関して言うと内燃機関は燃焼をしている

ピストン周りが最も早く温まるので

完全にエンジンが温まるのを待つ必要性は無いと言えます。

例えば一分間暖機をしただけでも
ピストン、シリンダー、吸排気バルブは直接燃焼に
さらされているので、接しているオイルも当然早く温められます。

そういった観点からも私は暖機不要論では無く

走行暖気 を提案したいと思います。

 

 

▼ 関連記事はこちら

冬季のタイヤ暖機とは

 

キャブレターとインジェクションの違い

 

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