今回は倒立式フロントフォークのオーバーホールを解説します。
一般的なバイクのフロントサスペンションは、テレスコピックフロントフォークを採用しています。
内部にオイルを封入していて減衰力を持たせているので、中のフォークオイルを定期的に交換したり、気密性を保っているオイルシールや、ダストシール等を点検して交換する必要が有ります。
フォークオイルは一般的に1~2万キロで交換するのが望ましいです。
オイルシールは10年を経過したら、交換時期と言えます。
こちらのバイクはKSR110です。
一見何の問題も無いように見えますが、よく見てみると……
ダストシールの先が裂けています。
このダストシールはとっくに寿命を迎えています。
ただダストシールが劣化しても、実際には殆ど問題はありません。
なにやら変な筋が見えます。
フロントフォークのオイルが漏れて、下まで垂れていました。
これはフロンとフォークのオイルシールが劣化した事によって、オイルシールがオイルを塞き止めきれず、オイルが漏れる現象です。
このバイクは新車で購入して17年が経過しており、まだ1度もオイルシール類を交換していません。
フォークオイルは7000キロで1度交換しています。
つまり17年、走行距離は14600キロで、オイルシールの寿命を迎えたことになります。
オイルシールは走行距離よりも、経年劣化でオイルシールが縮む事による体積変化によって起こります。
つまり新車から全く走らなくても、オイルシールは寿命を迎えます。
タイヤと同じです。
という訳でフロントフォークを取り外して、オーバーホールします。
フロントフォークをばらすので、ジャッキと馬を用意します。
今回フロントフォークをオーバーホールするのは、軽量級バイクなので簡易ジャッキで十分です。
中型以上のバイクではバイクジャッキの使用をお勧めします。
まずはフロントフォークのトップキャップカバーを外します。
カバーを外すと、フォークのトップキャップが現れました。
KSRのトップキャップは17mmの六角ボルト、ヘキサゴンソケットが必要になります。
この為にしか使わない工具です。
トップキャップを緩める前に、トップブリッジとフォークの固定ボルトを緩めておきます。
KSRの場合はトップキャップを緩める際に、ハンドルバーにソケットが干渉してしまうので、ハンドルバーを固定しているボルトを緩めて、フリーにします。
これで3ミリ程、隙間が出来ました。
そしてトップキャップをある程度緩めておきます。
次にアクスルナットを緩めておきます。
まずは、アクスルナットのゆるみ止めの割ピンを抜きます。
ちなみに割ピンは原則、都度交換となっております。
私は替えた事はありません。
このクラスだとまずインパクトレンチの必要はありません。
これが中型バイク以上だと、緩めるのに苦労します。
インパクトレンチが無い場合は、ショックハンマーや、パイプを使って緩めます。
▼ ショックハンマーの例
▼ パイプの例
アクスルナットを緩めたら、いよいよ車体のフロント側をリフトアップします。
ジャッキや馬を掛ける場所ですが
この2か所です。
今回はエキゾーストパイプにジャッキを掛けて持ち上げた後で、シリンダーブロックに馬を掛けます。
ジャッキアップして
馬を掛けます。
※バイクジャッキを使用しない場合は、必ず馬を掛けてください。
簡易的なパンタグラフジャッキ等は、持ち上げることは出来ますが不安定で作業中にジャッキが倒れてバイクも倒れてしまいます。
キャリパーを固定しているボルトを外して、キャリパーをフリーにします。
キャリパーを外して、アクスルシャフトを外します。
スピードケーブルも外します。
これでホイールがフリーになって、ホイールを取り外しました。
あとはいよいよフロントフォークを取り外します。
その前に、フロントフォークの突き出し量を、記録しておきます。
トップブリッジからフォークの先端が、上下に何ミリ出ているかを記録します。
フォークブリッジの固定ボルトを緩めます。
フォークブリッジの固定ボルトを緩めたら、フォークを下から引き抜きます。
片方のフォークが外れました。
もう片方のフォークも同様に引き抜きます。
これで2つのフォークの取り外しが完了しました。
次はフォークを分解します。
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