今回はアメリカのブーツメーカーである
"レッドウィング"を掘り下げてみたいと思います。
レッドウィングの歴史
まずレッドウィングというメーカーですが
靴を主に作っている会社で
日本ではアイリッシュセッターが最も有名な商品です。
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定番 8875
39800円 税込み
レッドウィング社は1905年創業の
110年以上の歴史を誇る
古き良きアメリカの伝統を継承している
老舗の靴メーカーです。
レッドウィングのブーツと言えば
元々は炭鉱労働者や鉄道員、郵便配達や電気工事士
狩人等の様々なワーカーに絶大な支持を得て
発展してきたメーカーです。
その歴史故にブーツの強度については
絶大な信頼性を誇っています。
またレッドウィングは自社で
革を加工する"タンナー"を持っているので
革の品質も管理する事が出来、供給も安定しています。
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また商品の価格帯も3万~5万円と高価ですが
その価格には当然理由が有ります。
グッドイヤーウェルテッド製法
レッドウィングの靴底は主に
グッドイヤーウェルテッド製法で作られているので
靴の剛性が高く、靴底の張り替えが可能です。
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図の様にアウトソールがウェルトと縫合されているので
ウェルトの糸を切れば、アウトソールを簡単に剥がす事が出来ます。
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また革の選定やなめし行程、着色、表面処理等の
革の寿命を最も左右するこれらのプロセスを
徹底管理しているので、レッドウィングの革は厚くて
長く使用できるものになります。
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そういった理由でレッドウィングの愛用者の中には
10年以上または20年以上も履き続けている方も居ます。
安価なブーツは靴底をセメンテッド製法という
靴底を接着剤を使用してミッドソールに張り付けてあります。
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こういう安価な靴は、元々靴底の交換を想定していないので
靴自体の強度が低く
靴底を張り替えても甲や内側の素材が早く劣化するので
セメンテッド製法の靴で5年以上履ける靴は、中々見当たりません。
また靴底を張り替えると、張り替え費用が靴自体の価格に肉薄してしまい
場合によっては靴の価格を超えてしまう事も有ります。
なので今市販されている靴の殆どは
靴底が減ったら捨てて新しいのを買うという
使い捨てを前提に作っています。
それに対してレッドウィングの靴は
靴底が減ったら張り替えて
再使用する事を前提に作っているので
靴自体の強度が全く違います。
なので長い目で見るとこういった靴は
むしろ経済的であるという面も有ります。
しかしレッドウィングのブーツは決して万能では無く
その強度ゆえに固く重たいので長歩きすると疲れます。
反対にセメンテッドの靴は
軽くて伸縮性が高いので楽に長距離も歩けます。
まあ一長一短と言えます。
エイジングを楽しむという文化
レッドウィングのブーツは新品時より、履き潰した方が良いという考え方がります。
それは長く履いている方が、革がクッタリとして
"良い味が出る"状態になり
愛用者の中には履き潰しているブーツの方が、カッコいいという風潮が有ります。
また実際にレッドウィングの様な本格的な靴は
アッパー(甲革)と、インソール(中敷き)
は共に分厚い強靭なレザーで作られているので、履く程に革が汗を吸収していき自分の足の形に変形して
履きやすく手放せない自分だけの靴となります。
▼ 4年半履いたオックスフォードブーツ
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甲部分の空間が潰れて
足の形に変形しているのが分ります。
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踵部分
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アウトソール
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そろそろソール交換が必要ですが
アッパーレザーが丈夫でまだまだ履けそうです。
レッドウィングのブーツは購入後
3カ月~半年間は、足が痛くなる事が多いですが
その後は足のカーブに靴が変形してくれるので
歩きやすい靴になります。
レッドウィングのラインナップ
アイリッシュセッター
用途:狩猟
実はアイリッシュセッターは1つのモデルで無く
シリーズの名称です。
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アイリッシュセッターは、日本ではレッドカラーが定番ですが、実は本国アメリカでは、元々このオレンジの様なブラウンカラーでした。
1950年に発売されると、ハンター達に絶大に支持を得て
レッドウィングの大躍進の火付け役となりました。
ペコス
用途:カウボーイ
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レッドウィングは1939年頃から
テキサスのカウボーイ向けにペコスの原型の
カウボーイブーツを発売しました。
その後様々に形を変えて
1961年に現在のペコスの形に定着しました。
ちなみにペコス(PECOS)とは
テキサスの町の名前です。
アイアンレンジ
用途:炭鉱労働者
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100年以上前の1910年に
既に炭鉱労働者にアイアンレンジが使用されていました。
炭鉱労働は石や石炭を扱う為に、常に危険と隣り合わせの仕事でした。
当時はまだつま先に鉄製カップが無かったので
レッドウィングはつま先部分に革をもう一枚当てがって
つま先の強度を上げる方法を用いました。
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エンジニア
用途:鉄道機関士
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エンジニアはレッドウィングのラインナップの中でも
最も堅強で重厚なブーツです。
ブラッククローンダイクのレザーを使用したモデルは
レッドウィングのラインナップの中でも
最高価格の(54864円)です。※税込み
現在はライダーブーツとして絶大な支持を得ていますが
元々は1936年にレイルロード・エンジニア
(鉄道機関士)向けに、発売しました。
当時の機関車はパワーソースにボイラー(蒸気)を用いていたので、炉内に石炭をくべる作業が必要でした。
石炭は重くて硬いので、スコップからこぼれた石炭が足元に落ちた際に、足元を守る為に
強固で分厚いレザーに、丈の長い11インチのブーツが支持されました。
1961年につま先に鉄製カップを用いられて
現在の形に定着しました。
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ロガー
用途:山林作業者
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ロガーは1940年に山林作業者向けに登場しました。
山林作業はチェーンソー等の重機を使って、丸太の上や木に登ったりととても危険な作業になるので
足を守る為に強度の高いブーツが必要とされていました。
その為に踵に大きなヒールにカウンター用いて、かかと部分の強度を確保しています。
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1966年に現在の形になりました。
ラインマン
用途:電気工事者
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ラインマンは電気工事者向けに発売されました。
当時の電気工事者は非常に危険な環境で仕事をしなければならず、何と3人に1人は作業中に命を落としていたという
恐ろしいデータが有る程です。
その為に電信柱等の高地に登ったりした際に、靴と足の遊びを無くして、靴が足にしっかりとフィットする様に
つま先付近まで紐で結べる仕様となりました。
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ポストマン
用途:郵便配達員、警察館
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ポストマンは1954年に
郵便配達員、警察館向けに登場しました。
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当時毎日重い鞄を持ち歩く郵便配達員の為に
平らで柔らかなクッション性の有る
トラクショントレッド・ソール(通称クレープソール)を
黒い色で合わせる事により、フォーマルで快適な靴として
現場の配達員から指示を受けて
アメリカ郵便局から指定靴になりました。
見た目こそ安価な革靴と変わりませんが
内側もオールレザー仕様で、レザーの堅強性は全く別物です。
フォアマン
用途:現場監督
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フォアマンは1930年代頃に、工業生産の効率が高くなり工場の監督者向けに作られた靴です。
工場長や監督は現場の作業員からすると、上司に当たるのでそれまでの作業靴の様なカジュアルなスタイルよりは
フォーマルなスタイルが必要でした。
しかし現場監督は、作業の管理以外にも
同時に自らも作業をこなさなくてはならないので
フォーマルな形ながら、堅強な靴が必要でした。
その為、フォアマンはポストマンよりも分厚い
2.3ミリの革を用いて
強度の高いコルクソールにミッドソールも追加して
オックスフォード並みのソールの厚みになっています。
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