さて今のバイクのドライブチェーンは
殆どシールリングを装着した、シールチェーンを使用しています。
具体的には250cc以上のバイクは
全てドライブチェーンにシールチェーンを装着していて
125cc以下では基本的には
ノンシールチェーンを使用している事が多いです。
125cc以下のバイクに
ノンシールチェーンを使っている理由は
恐らくエンジンパワーが少ないので
ノンシールチェーンでも、極端な消耗が無いと考えているのでしょう。
例えばカブなんかはノンシールチェーンでも
2万キロは軽く走ってしまいます。
カブは出力特性が穏やかでチェーンカバーも付いているので
チェーンにとっては優しい環境で
定期的に注油をしていれば驚異的な寿命が有ります。
そして殆どの場合5万キロ以下では
スプロケットもほとんど摩耗しないので
チェーンのみ交換で問題ありません。
ところがショップにもって行くと
チェーンは8000キロ位で、交換と言われてしまう事が多いです。
しかも工賃の関係で、スプロケも同時交換を推奨されてしまいます。
ちなみにショップでは安全圏の幅が非常に狭いので
場合によっては寿命の半分もいっていない様な場合でも
交換と言われることが有ります。
それは相対的に部品代よりも工賃が高いので
一度バラしてしまうと、交換してしまった方が効率が良い訳です。
例えばフロントフォークのオーバーホールを
ショップに依頼すると2万円位かかりますから
オイルシールやダストカバーは比較的に安いので
劣化していなくても同時交換した方が効率が良いです。
この2000円位の部品をけちって
フォークオイルのみ交換して
1,2年後にオイル漏れして
再度2万円払ってオイルシールやダストカバーを
交換する事は、2回目の工賃分が丸々損しているという事です。
なのでショップがパーツを早めに交換を促すのは
そういった修理と経済効果をうまくバランスさせている訳です。
決して悪徳業者という訳では無いので悪しからず。
ドライブチェーンの話に戻ります。
KSR110のドライブチェーンは
ノンシールなので500キロも走るともう伸びてしまいます。
またノンシールチェーンは
ピンとブシュ間のグリスが消失しやすいので
頻繁に注油の必要が有ります。
▼シールチェーンの詳しい構造解説はこちら
それにKSRの様なドライブチェーンが
むき出しになっているバイクのノンシールチェーンは
雨天時に走行すると、ドライブチェーンがすぐに
油切れをして大きなダメージを受けます。
ただノンシールチェーンにもメリットが有り
一般的にノンシールチェーンの方が
シールチェーンよりもフリクションロスが少ないと言われています。
その理由はノンシールチェーンは
ピンとブシュ間のシールリングを装着する必要が無いので
その分ピンの長さを短くできる訳です。
その為結果的にノンシールチェーンは軽くなるので
駆動抵抗が少なく、チェーン自体も軽いので
軽量化にもなり、絶対性能は高いと言われています。
しかしシールチェーンもここ10年位で
進化を続けています。
当初のOリングを、X型に変更して耐久性を向上させたり
プレートに穴を設けて軽量化したプレートホールを採用したり
プレートホールはただ単に穴開けると
強度が著しく低下してチェーンの破断を招きます。
穴の大きさの選定や位置、材質強度を確保した上で
最適な設計を実現したと言えます。
またその他にも薄型シールリングを開発したりして
旧車のチェーン規格にも、対応可能なシールチェーンも出ています。
そこで言えるのは現在のシールチェーンは
ノンシールチェーンと比較して
相対的に大きく高性能になっているという事が出来ます。
では現在の高性能化したシールチェーンと
ノンシールチェーンとはどれ位重量が違うのかを見ていきます。
今回検証するのは江沼チェーン420サイズです。
ではまずはノンシールチェーンの重量を見てみます。
420、100リンク
(750グラム)
次にシールチェーン
420、100リンク シールチェーン
(770グラム)
その差たったの(20グラム)
200グラムではありません。
20グラムです。
20グラム程度の重量差はもう誤差と言える程度です。
つまり今ではノンシールチェーンのメリットは
殆ど無いと言って良いと思います。
ただ現在チェーンメーカーもノンシールチェーンを
作っている理由はやはりコスト面が最も大きな理由ですが
その他にはレースの際に利用する人が多いという点が有ります。
レースでは10グラムでも軽量化した方が良いので
ノンシールチェーンが好まれる事が有りますが
実際はレース環境でもノンシールチェーンは
グリスの密封構造が無いので
高負荷時の円滑はシールチェーンよりも低いのと
レース終盤ではグリスが減少して、円滑性能の低下を起こす事から
レースの環境下でもノンシールチェーンの効果は
限定的だと言えます。
私もノンシールからシールチェーンに交換してみて
実感したのは、常にチェーンが円滑されているので
走行距離に関わらず走行フィーリングが一定だという事です。
ノンシールチェーンはいくらマメに注油したとしても
注油した時と200~300キロ程度走った後では
フィーリングが僅かながら変わってきます。
またノンシールの最も大きな問題は
チェーンリンクの偏伸びです。
偏伸びとは具体的に言うと
チェーンのコマによって伸び幅が違うという劣化症状です。
いくら注油をマメに行っていても
円滑不足からなるピンの摩耗が進み
結果的に偏伸びしたチェーンはどれだけ
グリスアップしても伸びが大きいコマの所では
スプロケットとコマの隙間が広くなるので
そこでブレーキがかかる様な減少が起こって
それが大きなフリクションロスとなります。
またノンシールチェーンは
マメに注油しなくてはならないので
グリスアップされたチェーンは埃や泥を呼びやすく
それがグリスに取り込まれて
時間の経過とともに固着し
リンクの抵抗を増やしてしまうという面もあります。
その事からも
短時間のレース等を除いては
現在ではノンシールチェーンの利用は
価格以外のメリットは無いと言えます。
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