さてバイク人口は90年代を皮切りに年々減少しています。
また二輪免許の取得者も減少傾向にあります。
※データは日本自動車工業会の物を抜粋。
そんな逆風の渦中にあるバイク業界ですが、最近二輪業界に大きなパラダイムシフトが起こっています。
それは二輪業界最大手のホンダが400cc以上のバイクの販売に関して
2018年から一般の販売店は取り扱えないようになっています。
(※新車)
これは国内最大手のバイク販売店であるレッドバロンや、その他のショップに関しても適応されています。
これは売れ筋である
CB400SF
GB350
これらが含まれるので、販売店には手痛いところです。
そしてカワサキも2020年1月から400ccを超える大型バイクの販売に関して、ホンダ同様にカワサキプラザ店での専売へと決定しました。
(※新車)
販売店からすると
Z900RS
MEGURO K3
等の最近売れているモデルが取り扱えません。
つまりまとめると
ホンダの新車は
250ccまでは一般の販売店で購入可能で
400cc以上はホンダドリーム店のみ
カワサキは
400ccまでは一般の販売店で購入可能で
401cc以上はカワサキプラザ店のみ
となりました。
(※中古車はこれまで通りどのお店も取り扱えます)
ちなみにヤマハ、スズキのバイクに関しては、これまで同様にどこのお店でも無制限に購入できます。
分かり易いように表にしてみました。
これらの販売チャンネルの再編成の理由は幾つかあるようですが
ホンダ、カワサキ共に専売化の理由は、顧客満足度の向上という事です。
1つの理由には高度に発展した電子制御システムの存在があります。
現在の大型バイクには、トルクコントロール、ABS等の高度な電子制御でエンジン回転数や、ブレーキ制御を行っています。
それらの複雑化した機能部品の整備や修理には、これまでの様に部品を分解、点検後に組み付けるといったような
アナログの整備だけでは対応が難しくなった事も有ります。
電子制御の点検や修理には、専用の電子装置で測定してECUを書き換えたり、エラーをリセットしたりする必要があり、これらを行うには
点検する装置だけでなく、装置を扱う専門知識も必要な為に専門性の技術を備えた直営店の専売にしたというものです。
もう1つの理由はメーカーが利益の取り方を、時代に合わせて変化させた事も有ると思います。
これまではメーカーはバイクの製造だけを特化して、利益を上げてきました。
しかし日本国内ではバイク人口の減少で、製造だけでは十分な利益を出せなくなってきました。
バイク業界をけん引する本田は、実は世界最大のバイクメーカーでもあります。
現在はバイク部門では製造で得る殆どの利益は主に
インド、インドネシアで得ています。
最近(スズキのジクサー)や(本田のGB350)等が販売されているのは、実はインドで販売されている物を流用している車両になります。
現在では主なマーケットはアジアなので、アジアで販売しているモデルを日本で売った方が、新たに開発費がかからず効率が良いのです。
日本で高い開発費をかけて高性能なバイクを作っても、中々利益が出ないのが現状です。
そういった経営戦略上メーカーも、生き残る為に経営方針を変えていかなければなりません。
これまでバイク販売店はメーカーから仕入れて売る事で、販売利益だけでなく納車整備費用や販売後の整備、車検などで利益を出していました。
しかし日本では先細りの二輪車市場で、メーカーは生産だけでは十分に利益を出せず
本来販売店が得ていた納車整備費、販売後の整備、車検、に加えてグッズ販売もすることになりました。
また本田、川崎が大きな車両のみ専売化した事が興味深いです。
これは数字で見ると1つの理由が見て取れます。
カワサキ、ホンダは大型バイク部門で販売シェア上位を誇ります。
1位 カワサキ(約25%)
2位 ホンダ (約15%)
大型バイク販売シェア2020年度
縮小の一途を辿るバイク業界で、利益率が高い大型バイクを中心に専売化して、メンテナンスや車検、買い替えなども含めてディーラーで一貫して対応する事で、先細りする二輪業界で生き残りをかけているとみられます。
販売店側からすれば改悪でしかない変更と言えそうです。
利益率の低い原付や250cc等の細かい対応は販売店に任せて
利益率の高い400ccや大型車両はメーカーが扱う。
となる訳ですから。
しかし大局的に見るとメーカーも、日本市場で活路を見出していかなくてはならず、生き残りの為には手段を選ぶ事が出来ないのが現状です。
またハーレーダビッドソン社が同様の手法で成功した事も、業界再編のヒントになったのかもしれません。
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