川崎重工が2003年に発売したのが
KSR110です。
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排気量:111cc/8.4馬力
車体重量:96キロ
エンジン:空冷OHC単気筒エンジン
燃料噴射方式:キャブレター
トランスミッション:自動遠心式4速トランスミッション
ブレーキ:前後ディスクブレーキ
フロントフォーク:倒立フォーク
実はKSR110は元々は1987年に
2サイクルエンジンで発売された
KS1、KS2のモデルが原型になっています。
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▲ KS-1
その後1990年にKSR1、KSR2にフルモデルチェンジして
12インチホイール、前後ディスクブレーキ、倒立フォークと、2サイクルのエンジン以外は
ほぼ現在の形に進化しました。
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▲ KSR-1 50cc(※川崎最後の50cc)
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▲ KSR-2 80cc(10馬力)
KSR110はシングルカムの単気筒空冷エンジンで
軽量、低燃費でトルク型のエンジンです。
また自動遠心式クラッチを採用しているので
クラッチレバーが無く、カブの様にシフトペダルの操作だけでギアチェンジ出来ます。
ギアが入った状態で停車しても、エンストする事は有りません。
またKSR110は、125ccクラスでは当時からすると、かなり奢った足回りを持って登場した
ミニモタードバイクです。
そのDNAは、元々競技用車両であったKLX110の
エンジン、トランスミッションを、そのまま流用している事も影響しています。
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▲ KLX110
そしてKSR110の実際の走行性能ですが
決して早いバイクでは無いです。
エンジンは低回転域からトルクが出る味付けで
高回転域のパワーが無く
1速は20キロを超えたあたりで、すぐに吹け切ってしまい
2速、3速とギアチェンジが忙しいです。
KSR110のエンジンは上のパワーが無いので
反対に低回転域の下のパワーを使って
早目のギアチェンジして走った方が効率よく速度が出ます。
2速、3速と引っ張っても無駄にエンジンが回るだけで、速度が伸びず
反対に早めのギアチェンジの方が、低回転域のトルクを利用してスムーズに加速します。
KSR110に乗った事が無い人は、意外かもしれませんが、この小さいエンジンと遠心クラッチという組み合わせの割りには
低速からトルクが太く、坂道でも3速、4速でも
アクセルを5割も開けなくても平気で登っていきます。
解り易く言うと、CB400SFよりも実際の低速トルクは有る印象です。
CB400SFは坂道だと、低回転域のトルクが薄く
簡単にエンストしてしまいます。
また車体も100キロを切っているので、驚く程に登板性能が高いです。
また最低地上高が225ミリと高く、可愛い見た目とは裏腹に
結構な悪路を簡単に走ってしまう実力を兼ね備えています。
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この最低地上高の高さが、オフロードを走るうえでは
圧倒的な安心感となります。
グロムやZ125PROでは155ミリなので
この7センチの差が急斜面や悪路での走行性能に大きく違いが出てきます。
私がZ125PROに買い替えないのは
この最低地上高の部分が大きくあります。
ただ、本格的なオフロードを走行しようとすると
限界を露呈してしまうのは言うまでも有りません。
本格的にオフロードを走行できないのは
主に2点の弱点が影響しています。
第一に短すぎるフロントフォークのストローク量です。
激しい路面のギャップでは、すぐにフロントフォークの縮み量の限界に達して、底付きしてしまい
路面のショックを吸収しきれずに、ハンドルまで突き上げが来てしまいます。
第2に小さすぎるホイールです。
12インチという小径ホイールのせいで
悪路では設置面積が小さ過ぎて、路面を噛み切れません。
また小径タイヤは路面の形状の影響を受けやすく、安定感が有りません。
なのでオフロード性能に関しては限定的です。
しかしながら、ちょっとした林道程度なら
軽い車体と太い低速トルクのお蔭で、グングン走ります。
また幹線道路を走っても、元気よく回るエンジンのお蔭で
交通の流れに乗って走る事が出来ます。
しかしこのバイクは決して長距離ツーリングには向いていません。
私も一度KSR110で北海道を一周しましたが
その時の感想は、きつかったです。
やはり小排気量&単気筒なので
60キロを超えて来ると、エンジンの振動が
ハンドル、フットペダルにまでビンビン伝わって来て
それが長時間続くと疲れてしまいます。
このバイクは時速50キロの時が、最も快適な速度域です。
振動も無く、車体も安定しています。
ちなみにKSR110の最高速度は
90キロ程度です。
パワーが無いので最高速は風の向きや、ライダーの体重に大きく影響されます。
追い風の時に、身体を伏せてフルスロットルだと
100キロは出る様です。
ノーマル状態では105キロを超えたという話は、聞いた事は有りません。
また純正のヘッドライトが暗く、LED化は必須のカスタムです。
▼ LED化の記事
また小さな車体の割りには7.3Lの大容量タンクなので
燃料を使い切れず、キャブレター内部にガソリンが劣化して
不純物が蓄積しやすいという、車体構成上の特徴があります。
▼ キャブレターオーバーホールの記事はこちら
またキャブレター&小排気量の宿命で
冬場のエンジン始動は大変です。
参考記事→KSR110 冬の冷感時対策を施工
こういった点を考えると、悪路を走らないのであれば
事実上の後継モデルである
Z125PROの方が快適です。
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▲ Z125PRO
▼ 参考記事はこちら
ただ、個人的にはZ125PROでは無く、KSR125として
KSRをフルモデルチェンジして、発売して欲しかったというのが本音です。
KSR110はバイクとして評価すると
小排気量のミニバイクという事で、決して魅力的なスペックが有りません。
しかしKSR110には、スペックにこそ現れない魅力が幾つも有ります。
まず第一に圧倒的な軽さから生まれる、扱い易さ。
立ちごけなんて、考える必要もありません。
そしてパワーを使い切って走るという、楽しさ。
街乗りや通勤でも、ギアチェンジを駆使して、深いバンク角でコーナーも曲がれるので、スクーターとは比べ物にならない位、楽しいです。
また車体構成がシンプル設計なので、壊れません。
北海道を11日間で3000キロ走り倒しましたが
ケロッとしています。
▼ 北海道ツーリング記事はこちら
やはり空冷単気筒は強いです。
という訳でKSR110のインプレでした。
ちなみに純正だとノンシールチェーンが装着されているので
シールチェーンに交換する事をお勧めします。
ノンシールチェーンは500キロも走ると、チェーンが伸びてしまって非常に面倒です。
▼ 関連記事はこちら