バイクのブレーキフルード交換の重要性と、特性などを徹底解説していきます。
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① ブレーキフルードの交換頻度
ブレーキフルード(ブレーキオイル)の交換頻度は
通常2年に1度は交換と言うのが一般的な原則です。
また新車時、またはマスターシリンダー、キャリパーを
オーバーホールした時は3年で交換するのが良しとされています。
これは新車時やマスターシリンダー、キャリパーのオーバーホールした時は
全ての経路が完全に新しいブレーキフルードに交換された状態なので、交換サイクルが長くなります。
反対に通常のブレーキフルード交換時は、ブレーキホース内のフルードは綺麗に入れ替わりますが
どうしてもキャリパーのピストン周り等の隅の部分は、完全に古いブレーキフルードが抜けにくく
結果的に古いブレーキフルードが残った状態になってしまいます。
なので一般のブレーキフルード交換時は、次の交換サイクルが2年と短く指定されています。
② ブレーキフルードとは
DOT4
現在の自動車では殆ど全てがDOT4指定になっています。
ブレーキフルードには規格が有り
DOT3 ドライ沸点 205℃
DOT4 ドライ沸点 230℃
DOT5 ドライ沸点 260℃
DOT数が上がる程、高性能になっていきます。
しかし、高性能になればなるほど吸湿性が高くなり、寿命は短くなるので注意です。
何故、ブレーキフルードはパワーステアリングの様な作動液であるのに、使用寿命が短いのかというと
それには理由があります。
ブレーキフルードは一見オイルに見えますが
厳密に分類すると
グリコール系
シリコーン系
鉱物油系
の3種類があります。
ブレーキフルードには主にグリコール系が使用されています。
その理由は、鉱物油系だと万が一水が混入した場合に、分離してしまい分離した水分が高温化で、沸騰してまいます。
沸騰している箇所の圧力伝導性が急激に下がるので、ブレーキ性能が一気に低下していしまいます。
それがグリコール系だと水分を取り込んで、分散化するので
全体の純度は下がるものの、分離水分が発生しないので
ブレーキ性能を保ち続ける事が出来ます。
しかしその水溶性で有るがゆえに、吸湿性が高いのです。
ブレーキフルードはその吸湿性の特性の為に、走行距離に関係無くフルードが劣化するので
期間を目安に交換しましょう。
③ ブレーキフルードが劣化すると
ブレーキフルードが劣化すると沸点が下がり、ハードブレーキング時にフルードが沸騰してしまい、伝導性が下がり油圧が低下して制動力が激しく下がってしまいます。
またブレーキフルードが劣化してくると、明らかにブレーキタッチがソフトになってくるので、その様な状態だと
急制動の能力が落ちているので、早急に交換しましょう。
ブレーキフルードの劣化の目安の1つに色の変化があります。
ブレーキフルードが新しい状態では、少し黄色みがかった透明色です。
▲ 新しいブレーキフルード
劣化してくると、茶色に変色します。
▲ 新車時から3年経過したリヤ側ブレーキフルード。
▼ フロント側
そして4年も5年もブレーキフルードを交換しないと
フルードが黒くなる事が有ります。
ブレーキフルードが黒い状態は完全に末期で、ブレーキフルードが水分を含んでしまっている状態です。
この状態では既にブレーキ経路に不純物の体積でマスターシリンダーのピストンカップの劣化、キャリパーのピストン部分の摩耗が出てしまいます。
またブレーキフルード内の水分による酸化がおきて、マスターシリンダーが錆びている可能性が高いです。
ブレーキ系統は密封されていて、錆びないと思っている方が居ますが、ブレーキフルード内の水分で錆びます。
なのでその場合はオーバーホールをお勧めします。
④ 四輪車と二輪車のブレーキ特性の違い
また四輪車と二輪車では、ブレーキフルードの交換頻度に対する重要性は、変わってきます。
四輪車ではブレーキ機構に倍力装置
(ブレーキブースター)が付いています。
倍力装置は一般的な自動車には負圧式と言って、エンジンの吸入負圧を取り入れて、その負圧によって操作する力を補助しています。
(※ハイブリッド車は電動油圧式)
なので人間がブレーキを踏む力を、数倍に増幅させた油圧が発生します。
しかし一般的な二輪車に採用されているブレーキ機構には
この倍力装置は使われていません。
(※BMW等の一部車種には採用されています)
なので二輪車の場合は、ブレーキフルードが劣化してくるとすぐにブレーキタッチが変わってきて、制動力の低下も早いです。
もちろん四輪車もブレーキフルードが劣化してくれば、制動力は下がってきますが、倍力装置のおかげで中低速ではあまり劣化を体感出来ない事が多いです。
そんな事から、四輪車では6年、7年も全く交換していないという方も居ます。
車を市内で買い物程度に使っている様な人では、10年間位交換しなかったとしても、使用上は大きな問題にはなりません。
(※ブレーキ構成部品には腐食が進みます)
また四輪車はマスターシリンダーや倍力装置が、ボンネット内にカバーされているので、雨水による腐食等の心配も無く
それ位ズボラに乗っていても、街乗り程度では極端に危険では無いので
ドライバーのブレーキフルードの劣化に対する危機意識は低いと言えます。
⑤ 二輪車はブレーキ構成部品が傷みやすい
二輪車はマスターシリンダーやブレーキレバー等の
制動装置の要が外に露出しています。
マスターシリンダーのピストンに、ブレーキレバーが当たる部分。
単体で見るとこんな感じです。
ブーツを外すとこんな感じです
このゴムも経年と共に劣化していくので、二輪車の方がメンテナンスに関してはシビアになります。
最後に
⑥ バイクもABS義務化へ
2021年10月から中型の二輪車は全て、ABSユニットの装着が義務化されます。
ABSユニット(※正確にはハイドロリックユニット)は
現在、新規の2輪車においてはABSの搭載は、既に義務付けられています。
厳密には
125cc以上 = ABS
50~124cc = ABS または CBS
50cc以下 = 義務なし
ちなみに2018年の規制以前から発売されている
継続車に関しては移行期間が設けられていて
2021年9月までは対象外とされています。
なので現在はバイクのABS装着化の、過渡期になっていて
同じ車種でもABSの搭載されているタイプと、ABS無しのタイプが混在している状態です。
私のバルカンSもそうで、ABSの搭載を任意で選べました。
バルカンSの場合はABSの設定を選ぶと
5万円も高くなり、価格的には高い装備でした。
今後は全ての中型バイクにABSの搭載されるので、大量発注により、ABSの搭載コストが一気に下がる事が予想されます。
またバイクのホイールロックによる悲しい事故も減るので、ライダーにとっては歓迎すべき変化と言えます。
ちなみにABSユニットはマスターシリンダーと、キャリパーの間に油圧を遮断できる構造になっています。
センサーがホイールの回転を監視していて、走行中にホイールがロックを感知すると、ABSユニットが直ちに介入して
油圧を遮断してホイールのロックを解いて、再び回転させます。
そしてすぐに油圧を開放してブレーキを効かせます。
この油圧の遮断、開放を瞬間的に繰り返す事で、ホイールのロックを防ぐ事を実現しています。
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