ブレーキの進化について考える

今日はブレーキについて考えてみます。

 

 

ブレーキと言えば普段は何気なく使っている装備ですが

実は最も重要な装備ブレーキです。

 

走らないのも困りますが

止まらない事が一番恐ろしいですから。

 

ではまずもっともベーシックな

ドラムブレーキです。

 

 

ドラムブレーキの主な構成部品は

ブレーキシュー(ライニングシュー)

ブレーキドラム

ホイールシリンダー

 

の3つの部品で構成されています。

 

現在フロントブレーキにドラムブレーキを採用している

珍しいバイクがカブです。

カブにドラムブレーキを採用している理由を考えると

ドラムブレーキの最大の利点を知る事が出来ます。

 

ドラムブレーキの最大の利点とはその耐久性です。

 

カブの様な商用用途だと

10万キロ超える様な距離を走る事を想定しているので

 

ディスクブレーキを採用してしまうと

ブレーキパッドの交換はもちろんの事

ディスクローターも交換する必要が出てきます。

 

ドラムブレーキは構造部品の耐久性が高いので

ブレーキシューの寿命も高く

ブレーキシューの摩擦相手である

ブレーキドラムを交換するような事は有りません。

 

そういったメンテナンスコスト面で

有利なドラムブレーキが商用ユースでは支持されています。

 

 

またドラムブレーキは低性能といったイメージが強いですが

実際にはディスクブレーキと比べても

制動力が低い訳ではありません。

 

制動能力は摩擦面積と摩擦係数で決まるので

制動力を上げようと思えばシューとドラム接地面積を大きくして

摩擦係数の高い素材のシューにすればいいだけです。

 

ただドラムブレーキが少数派になっている理由は

制動力では無く

放熱性の悪さによるフェード現象の懸念や

 

深い水溜りを通過した際にドラム内に水が浸入すると

しばらく制動力が急減してしまう事や

 

コントロール性に劣るという点が挙げられます。

 

またそれ以外にもバイクの様に趣味性が高い乗り物では

ユーザーが見た目や装備に対しての要求が高く

 

実際の性能よりも見た目のインパクトを求めるユーザーに

メーカーが合わせていった面も有ります。

 

例えばホーネットの180サイズの後輪タイヤなんかも

実際の性能面ではオーバースペックで

その太い後輪を生かせるほどのパワーも無いので

 

適正の150サイズのタイヤの方が軽量で

コーナーでも寝かせやすくバランスが良いです。

 

よくある4ミニカスタムの

大径ディスクローターや対抗式ピストンのキャリパー等もその一例で

 

元々車体が軽くタイヤが細い4ミニバイクでは

過度にブレーキ性能を上げても

ホイールロックを起こしてしまうだけで

 

本来ブレーキ性能を上げるには

車体全体で構成して性能向上をしないと意味が有りません。

 

 

またドラムブレーキのメリットの1つにサーボ効果が有ります。

 

サーボ効果とは摩擦材であるシューをドラムに接触させた時に

回転しているドラムにシューが引き込まれる現象です。

 

これによって小さな圧力でも大きな制動力を得る事が出来ます。

 

このサーボ効果のおかげで

初期の自動車にはブースター(倍力装置)が

無くても有る程度の制動力を得る事が出来ました。

 

ただ逆に言うと高速走行時等では

初期制動力が効きすぎてホイールロックしたり

急激にフロントヘビーになって車体のバランスを失い易く

コントロール性では劣る面も有ります。

 

 

そして現在ではブレーキの主役となっている

ディスクブレーキです。

 

 

ディスクブレーキの構成部品は

ディスクローター

キャリパー&ピストン

ブレーキパッド

 

と大きく分けて3つの構成部品からなっています。

 

まずはディスクローターから見ていきましょう。

 

これは初期のタイプのディスクローターです。

シンプルです。

 

そしてディスクローターも日々進化していて

ディスクにホールが設けられ

軽量化&放熱性が高まりました。

 

最近ではローター自体がウェーブ形状になっている

ペタルディスクが出てきました。

最近のディスクローターは

ディスクローターとホイールの取り付け部分が

ディスクローターの外側に設計されているので

急制動時にディスクローターのたわみが少なく高剛性です。

 

▼これまでのディスクローター

ディスクローターのブレーキパッドが当たる部分と

ディスクローターをホイールに留めているボルトの位置が遠いです。

 

▼最新のディスクローター

ディスクローターとホイールの

取り付けボルトの位置が非常に近いです。

 

またディスクローターの面積が小さすぎるので

強度と排熱面積を稼ぐ為にマウントを大きくしています。

 

 

ここまで軽量化されていると

これまでのディスクを見慣れている私は

何だかポキッとローターが折れてしまう様な気がしてならないのですが

 

もちろんメーカーが厳しい耐久テストを行っているので

そんな心配は有りません。

 

 

ディスクブレーキも日々進化を続けていて

シングルディスクからダブルディスク

 

キャリパー形式が

片持ち式から対抗式

 

またピストンも1,2,3,4と

制動力に合わせて数が増えていきます。

 

そして最近ではラジアルマウントキャリパーが登場しました。

ラジアルマウント方式は

キャリパーの取り付け方法が異なり

 

強いブレーキを掛けた時に

ディスクローターの回転力に

キャリパーが引っ張られた時の捻じれ剛性が高く

 

結果的にハードブレーキング時に

ハンドリングの安定性を保つ事が出来ます。

 

下が通常のキャリパーマウントです。

キャリパーをスライドピンステーを介して

フロントフォークに2本のボルト横に留めています。

 

シンプルで軽量です。

 

 

次にラジアルマウントキャリパーです。

1番の違いはキャリパーマウントを留めている

ボルトの位置です。

 

強い力のかかる回転方向に対して

ボルトがでは無くに設置されています。

 

当然ボルトは横に対しての剛性は弱く

縦に対しては強い剛性があります。

 

これはキャリパーのマウント剛性と言うよりも

ディスクローターの回転方向の圧力に対しての

引っ張り剛性が高いと考えるのが分かり易いです。

 

これまではキャリパーは車体に留まっていれば良い

という考え方だったのが

 

現在の高性能バイクでは

キャリパーと車体の捻じれ剛性の高さを追求した訳です。

 

 

次にブレーキパッドです。

 

ブレーキパッドは大きく分けて3種類あります。

 

オーガニック 繊維素材を主に形成されています。

セミメタル 金属素材と樹脂素材で形成されています。

シンタード 主に金属素材で形成されています。

 

実際にはこの3種類という訳では無く

様々な摩擦素材を複合的に作られています。

 

なのでメーカーによって

摩擦素材の配合割合が違います。

 

ブレーキパッドはどうしても

制動力と耐久性が反比例するので

使用状況の上限の範囲で選択するのが効率的です。

 

例えば制動力が最も高いシンタードパッドは

ディスクローターへの攻撃性も最も高いので

ディスクローターの交換サイクルを早めてしまうので

メンテナンスコストが増してしまいます。

 

 

最後にABSです。

(アンチロックブレーキシステム)

 

現在ではEUの販売基準に追随する為に
バイクでもABSの採用が拡大されていて

 

2021年10月以降は中型以上の全てのバイクが

必須義務となります。

 

125ccまでのバイクは

ABS、CBSのどちらかが必須義務です。

 

CBS

(コンバインドブレーキシステム)

前後のブレーキを連動させるシステム

※ホイールロックは制御できない

 

またCBSABSを組み合わせたシステムも有ります。

 

二輪車は四輪車と違って

ホイールロック転倒

という図式が有ります。

 

二輪車は基本的に直進時以外でホイールロックしてしまうと

車体はバランスを失って転倒してしまいます。

 

その為にEUのデータでは二輪車の転倒事故の内

3割がホイールロックによるものだと言われています。

 

そういった事からも二輪車ではABSの必要性は非常に大きいです。

 

という訳で自動車のブレーキは日々進化していて

制動距離が短くなって安全になってきています。

 

 

最後に

四輪車のブレーキの構成部品には有って

二輪車には無い部品が有ります。

 

それはブースター(倍力装置)です。

 

実はバイクは人力のみの圧力で

200キロも有る車体を瞬時に制動しています。

 

ブレーキレバーやフットペダルでテコの原理を利用してはいますが

油圧を高める構成部品は有りません。

※BMW等一部車種では倍力装置が使われています。

 

なのでブースターが無い構造上

バイクはブレーキフルードの劣化による

ブレーキ性能の低下は顕著になるので

 

ブレーキフルードを3年を超えて使っていたら

ブレーキ性能が確実に低下しているので

安全の為に積極的に交換しましょう。

 

どんなバイクにも対応可能の(DOT4規格

 

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